〒105-0013 東京都港区浜松町2-7-8 加藤ビル4階

お電話でのお問合せはこちら

03-6435-7788

受付時間
平日 9:30~17:30

お気軽にお問合せください

システム開発契約における契約締結上の過失の理論

契約書が作成される前に開発に着手することは現場の判断としてやむえない場合もあろうかと思いますが、契約の成立が否定された場合、ベンダ企業は一切救済されないのでしょうか。このような場面で適用の有無が問題になるのが「契約締結上の過失の理論」です。

 「契約締結上の過失の理論」とは、契約の準備段階に入った当事者は、相手方当事者の財産等を害しない信義則上の義務を負い、この義務に違反して相手方に損害を発生させた場合には、これを賠償しなければならないとする法理のことをいいます。

 ここでは、システム開発に関する契約について、契約締結上の過失の理論を適用した、東京地裁平成17年3月24日判決を確認してみます。この事案は、契約書は存在していないものの、内示書が作成さていた事案です。内示書では、「代金額」や「納入時期」が決定されているわけではないことから、契約の成立は否定していますが、以下のように判示し、特段の事情がないにもかかわらず、契約を締結しなかった場合、損害賠償義務を負うとしています。

東京地裁平成17年3月24日判決の要旨

下記の①、②等の事情からすれば、契約締結上の準備段階にあったことは明らかであり、ベンダ企業において、将来、契約が締結されるものと信じて行動をすることは十分に予想されるところである。よって、実際に契約が成立しなかったとしても、ユーザ企業らに特段の事情がないにもかかわらず、その契約締結をしなかった場合には、ユーザ企業らは、契約が締結されるものと信じて行動をしたことによって被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。

   

①  ベンダ企業とユーザ企業は、本件システムに関し、開発作業を行い、本件FSP(本件システムのシミュレーション)を実施し、ユーザ企業による評価がなされ、実質的な開発について、これを行うこととし、ベンダ企業との本件開発作業を行っていること。

②  ユーザ企業がベンダ企業に対し、内示書の提出を要求し、ベンダ企業がこれを提示していること。

  従って、ユーザ企業の担当者としては、まだ契約が締結書が作成されていないからという理由だけで、契約交渉を破棄することは危険です。合意に至らない可能性があるのであれば、事前に、その旨、ベンダ企業に伝えるべきす。安易にベンダ企業に開発作業に着手させるべきではないですし、一定の作業に着手しているにもかかわらず、契約交渉を打ち切る場合には、上記のとおり、ペナルティを負う場合があることを理解しておく必要があります。

弁護士プロフィール

弁護士 松島淳也
経歴

2006年 弁護士登録
2017年   松島総合法律事務所設立

まずはお気軽にご相談ください。

ご連絡先はこちら

松島総合法律事務所

お電話でのお問合せはこちら

受付時間:平日 9:30~17:30

03-6435-7788

メールでのお問合せはこちら

住所

〒105-0013
東京都港区浜松町2-7-8
加藤ビル4階