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請負契約で「仕事」の「完成」が重要な理由とその判断方法

1.「仕事」の「完成」という概念が果たしてきた機能

 システム開発委託契約は、一括請負契約を締結した場合、民法上の請負契約として評価されることが通常ですし、多段階契約を締結する場合でも、少なくとも開発工程(一般的に、契約金額がもっとも高額な工程で、契約期間ももっとも長期になる工程)は、請負契約で締結するのが通常です。

 そして、仕事の完成という概念は、2020年4月に新しい民法(以下、新しい民法を「現行民法」、改正前の民法を「改正前民法」といいます。)が施行されるまでの改正前民法では、以下の2点における判断基準として機能するという点で、極めて重要な意味がありました。

 

     ベンダ企業がユーザ企業に対し報酬を請求することができるか否か

  ②  ベンダ企業に担保責任が発生するか否か

(特に、契約を解除できるか否か要件が異なるため)

 

 しかし、現行民法では、契約不適合責任が問題となる場合も未完成の場合も、損害賠償請求については現行民法415条等、解除については現行民法541条等が適用されることとなり、どちらの場合も同じ条文で処理されるため、②については、あまり重要な意味がなくなったのではないかとの印象を受けます。

 もっとも、①のベンダが報酬の請求をできるか否かという点については、引き続き、判断基準としての機能を果たすものと考えられます。

 

2.仕事の完成の判断基準(改正前民法)

 請負契約は、契約上の特約が規定されていない場合、仕事が完成して初めて報酬を請求することができる契約です。そのため、どのような状態になれば完成していると評価できるのかという点が重要です。この点について、改正前民法を前提として、従来、裁判所は以下のように判断してきました。

東京地裁平成14年4月22日判決

   民法六三二条及び六三三条は、請負人の注文者に対する報酬の支払時期について、請負人が仕事を完成させ、仕事の目的物を注文者に対して引き渡したときであると規定し、他方、同法六三四条は、仕事の目的物に瑕疵があるときは請負人は注文者に対し担保責任を負い(一項)、請負人が仕事の目的物の瑕疵についてその担保責任を果たすまでは注文者は報酬の支払につき同時履行の抗弁権を有すると規定している(二項)。これら民法の規定によれば、法は、仕事の結果が不完全な場合のうち仕事の目的物に瑕疵がある場合と仕事が完成していない場合とを区別し、仕事の目的物に瑕疵が存在しても、それが隠れたものであるか顕れたものであるかを問わず、そのために仕事が完成していないものとはしない趣旨であると解される。

よって、請負人が仕事を完成させたか否かについては、仕事が当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否かを基準として判断すべきてあり、注文者は、請負人が仕事の最後の工程まで終え目的物を引き渡したときには、単に、仕事の目的物に瑕疵があるというだけの理由で請負代金の支払を拒むことはできないものと解するのが相当である。

 従って、抽象的な基準としては、主に「請負人が仕事を完成させたか否かについては、仕事が当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否か」という考え方(以下「予定工程終了説」といいます。)が採用されてきました。

 そして、「完成」しているか否かを判断するにあたり、成果物がすべて納品されているか否か、ユーザによる検査に合格しているか否か、情報システムが稼働しているか否か、保守契約が締結されているか否か等の事情を考慮して判断しているものと考えられます。

 

3.仕事の完成の判断基準(現行民法)

 改正前民法では、前述のとおり、主に予定工程終了説によって判断されてきましたが、現行民法でも予定工程終了説を基準とすべきか否かという点については議論の余地があるところであり、今後の裁判所の動向を確認する必要があります。

弁護士プロフィール

弁護士 松島淳也
経歴

2006年 弁護士登録
2017年   松島総合法律事務所設立

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