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1.ユーザ企業がベンダ企業に対して損害賠償請求をする場合
ベンダ企業が開発に失敗した場合、ユーザ企業がベンダ企業の債務不履行責任(瑕疵担保責任や契約不適合責任を含む)や不法行為責任を追及して損害賠償請求をすることができる場合があります。
ユーザ企業が損害賠償請求をする場合、主に、以下の項目について検討することになるでしょう。
もっとも、上記の項目は、あくまでも検討すべき項目の候補であり、必ずしも損害賠償請求ができるというわけではありません。
また、1、2については、上記の損害賠償請求の規定を利用するよりも、原状回復請求(民法545条)を検討した方がよい場合もあります。
従って、ご自身が関与しているプロジェクトで、損害賠償請求や原状回復請求ができるか否かについては、専門家の意見を確認するようにしてください。
2.ベンダ企業がユーザ企業に対して損害賠償請求をする場合
ベンダ企業も、ユーザ企業が協力義務に違反したために開発が頓挫し、完成に至らなかった場合には、ユーザ企業の債務不履行や不法行為を根拠として損害賠償請求をすることが考えられます。
また、ユーザ企業から解除通知書が送付されてきた場合、ユーザ企業の契約解除の主張を、民法641条(請負契約の場合)に基づくものであると援用して損害賠償請求をすることも考えられます。
民法641条
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
3.過失相殺
ベンダ企業又はユーザ企業が損害賠償請求をした場合、損害が発生した原因が損害賠償請求をしている当事者にも認められる場合には、過失相殺の法理によって、損害賠償額が減額されることになります。
例えば、ユーザ企業に発生した損害が1億円であったとしても、ユーザ企業側にも損害が発生した原因があり、ベンダ企業とユーザ企業の過失割合が6:4であった場合、ユーザ企業の損害賠償請求額は4割が過失相殺され、6000万円まで減額されることになります。
4.責任制限条項の適用
システム開発委託契約では、損害賠償額の上限が契約上規定されていることがあります。例えば、損害賠償額は、「損害が発生する直接の原因となった個別契約の契約金額を上限とする」と規定されている場合等です。このような場合、相当因果関係の認められる損害額が、個別契約で定めた契約金額を超えていたとしても、責任制限条項によって、損害賠償請求額が制限される可能性があります。上記の例で説明すると、実際には、損害額が1億円であったとしても、損害が発生する直接の原因となった個別契約の契約金額が5千万円であったとすると、損害賠償請求ができる金額は5千万円になってしまう可能性があるということです。
5.まとめ
以上のように、ベンダ企業又はユーザ企業が、相手方に対して債務不履行(瑕疵担保責任や契約不適合責任を含む)、不法行為等を根拠に損害賠償請求をした場合、債務不履行や不法行為が肯定されれば、①相当因果関係の認められる損害額の認定、②過失相殺の有無、③責任制限条項の適用の有無が判断されることによって最終的な損害賠償請求額が決定されるのが通常であると考えられます。